提言・要望

2016.07.28

総合的かつ大胆な経済対策の実施に関する要請

 わが国経済は、果敢な経済対策が奏功し、企業収益の増加と国民の雇用・所得の拡大が実現するなど経済再生とデフレ脱却に向けた動きが着実に進展してまいりました。
 しかしながら、一方では個人消費や設備投資に力強さを欠き、加えて、中国の成長鈍化、石油などの資源価格の下落、さらには英国のEU離脱決定による影響など世界経済の減速も懸念され、人口減少、高齢化といった社会的な要因とも相まって、先行きへの不透明感が高まってきていることが危惧されます。
 こうした状況の中で、先日のG7伊勢志摩首脳宣言においては、持続可能で均衡ある成長経路を迅速に達成するため、「全ての政策手段――金融、財政及び構造改革――を個別にまた総合的に用いる」こととされました。
 また、今回の参議院選挙は、国民の多くが政府・与党の経済政策を支持し、期待していることを反映した結果となりました。
 今こそ、デフレからの完全な脱却と一億総活躍社会の実現に向けて、財政出動を含めた総合的かつ大胆な経済対策を実施すべきであります。
 この場合、経済対策の効果を一過性のものにすることなく、将来にわたって自然災害リスクの低減や社会全体の生産性向上に寄与する、21世紀型の質の高いインフラへの投資を重視するべきであると考えます。特に、昨年決定された第四次社会資本整備重点計画に基づく事業や、国土交通省が打ち出している生産性革命プロジェクトを加速することにより、GDP600兆円実現の基盤が強化されることを期待するものであります。
 以上の認識から、当面の経済財政運営に関し、次の点を要請いたします。
 なお、社会基盤整備を担う建設業にあっては、公共事業費の安定的な推移や賃金の引上げを背景に必要な労働力は確保されており、当面の施工余力には問題がないことを申し添えます。

                                       記

1. 不安定な国際経済情勢の中で、わが国がデフレ脱却への確固たる姿勢を示し、世界経済の安定的な成長に向けて各国が協調して対応する流れを先導するとともに、経済の好循環を確実なものとして一億総活躍社会を実現するため、財政出動を含めた総合的かつ大胆な経済対策を早急に実施すること。

2. 財政出動に当たっては、東日本大震災と熊本地震からの復旧・復興を加速するとともに、第四次社会資本整備重点計画を推進する観点から、国土の強靭化と経済の持続的成長に寄与する公共事業を柱とした補正予算を編成すること。

以上

平成28年7月

一般社団法人日本建設業連合会 会長 中村 満義