事業計画

基本方針

 我が国経済は、政府の強力な経済対策の下でデフレ脱却に向けた動きが着実に進展しており、平成28年度は好調な企業収益を背景とした設備投資の増加、所得の増加を背景とした個人消費の持ち直しなど、緩やかな回復が見込まれている。
 建設市場は、活発な民間投資や設備投資の復調、東京オリンピック・パラリンピック関連事業や堅調な公共投資に支えられ、日建連会員企業の受注で見るとリーマンショック前を上回る水準にまで回復してきた。

 日建連が昨年発表した長期ビジョンでは、今後10年間で建設業の再生を実現するとの明確な目標を掲げ、担い手の確保と生産性の向上を両輪とする今後の建設業の道筋を提示した。
 今日こそ、建設業再生の好機であると意を強くし、この機会に産業としても企業としても、多年染着いたデフレマインドから脱却し、建設業再生に向けた諸懸案に積極的にチャレンジしなければならない。

 平成28年度は、新日建連の発足とその直前に発生した東日本大震災から5年という、当団体にとっての大きな節目の年である。
 日建連は、わが国建設業の主導的団体として、会員企業はもとより、政府、発注機関、各種業界団体や労働組合など、関係する組織・団体と連携して長期ビジョンに掲げた目標の達成に向けた活動を積極的に推進し、建設業再生を確実なものとする決意である。

 日建連は、平成28年度においては、こうした基本認識に立って、建設業再生のための諸施策の具体化に向け、以下の重点事項を中心として、各般の事業を推進する。

(1)担い手の確保・育成

  • ①建設技能者の処遇改善の総合的推進
  • ・ 「建設業の長期ビジョン」が掲げた 2025 年度までに新規入職者90万人の目標に向けて若年技能者を確保し、世代交代を実現するため、建設技能者の処遇改善を推進する。このため、
      ① 他産業に負けない賃金水準の確保、
      ② 社会保険加入の徹底、
      ③ 建退共制度の民間工事における適用促進、
      ④ 4週8休を目指した休日の拡大、
      ⑤ 社員化等による雇用の安定、
      ⑥ 重層下構造の改善
    の6項目について、長期ビジョンをはじめ日建連や国土交通省がこれまでに表明した諸方策に従い、強力に推進する。
    これらの方策の実施に当たっては、専門工事業者に積極的な取組みを促し、元請として必要な支援を行う。

  • ②建設キャリアシステム(仮称)の構築
  • ・ 建設キャリアシステム(仮称)は、建設技能者がその経歴や保有資格をキャリアカードに登録し、工事現場に入場する都度その就業履歴を蓄積するシステムで、技能者の資質を見える化し、技能に相応しい処遇の確保と資質の向上を促すための基礎インフラとなるものである。
    また、技能者情報の活用により、工事現場の効率的な運営や、工事の安全と品質の向上に資することも期待できる。

    ・ 日建連は、システム開発の技術面を支援するとともに、国土交通省、関係諸団体と連携して、同システムの平成 29 年度運用開始を目指す。
    平成28年度においては、同システムの運用主体となる準備組織の立上げと、同組織によるシステムの構築、システムの普及に向けた運営体制の整備などに積極的に協力する。

  • ③女性の活用
  • ・ 日建連は、生産年齢人口の減?が続くわが国で担い手の世代交代を実現するためには、女性の活用が不可欠であることから、平成25年以来女性の入職促進と、女性が活躍できる条件整備に向けた活動を展開している。。

    ・ 平成28年度においては、「女性が働きやすい現場環境整備マニュアル」および同マニュアルの「チェックリスト」を活用し、建設現場の環境整備を元請の役割として積極的に推進する。
    また、専門工事業者と協力して、女性への求人情報の効果的な発信や、女性求職者の相談窓口の整備などを行い、女性技能者の入職促進を本格化する。

    ・ これらと合わせて、技術者、技能者を問わず女性が普通に活躍できる産業を目指し、出産、子育てへの現場工程や人事面の配慮、男性と同等の処遇の確保等を進めるとともに、建設業には女性の活躍の場が多くあることを、社会に向けて更に発信する。

    ・ 幸い、建設業で活躍する女性の愛称「けんせつ小町」は好評であり、躍動するけんせつ小町の姿がメディアで紹介される機会も増えてきたので、今日の政府、産業界をあげた女性活躍推進の気運の中で、建設業がそのトップランナーと目されることを目指したい。

    (2)生産性の向上

  • ①生産性向上の積極展開
  • ・ 建設技能者の大量離職時代を乗り切るため、多くの若者を迎え入れ、建設技能者の世代交代を進めることと並行して、生産性を高め、建設生産を抜本的に省人化することが急務であり、担い手の確保と生産性の向上は、長期ビジョンにおける建設業再生を果たすための両輪である。

  • ②「生産性向上推進要綱(仮称)」の策定
  • ・ このため、平成 28 年度においては、生産性向上のための技術革新、生産工程の合理化および業界構造の改善に関する推進方策とその工程表、当面5年程度で目指すべき目標、進捗状況と問題点の年度ごとの検証の方法からなる「生産性向上推進要綱(仮称)」を策定し、日建連を挙げて生産性向上を強力に推進する。

    ・ また、生産性向上には、発注の平準化、合理的な契約方式の採用、省力化施工を可能とする設計など発注者と設計者の協力が前提となり、建設資機材、輸送の改善など関連業界に対しても幅広く協力を求める必要があるので、これらに対する要請事項を取りまとめる。
    さらに、建設業の生産性向上とそれによる省人化には、日建連会員企業にとどまらず、建設業全体のレベルアップが求められるので、専門工事業界や地方、中小建設業界に期待する事項などを取りまとめる。

    (3)建設市場の合理化

  • ①公共工事における発注者とのパートナーシップの強化
  • ・ 改正品確法運用指針の的確な運用、適切な工期設定と工程管理情報の共有化など、発注者との連携を高める取組みを推進する。

    ・ 公共工事の契約について、事業特性に応じた入札契約方式、過度な価格競争に陥らない入札契約方式など多様な入札契約方式の導入に関し、受注側としての実務的な検討を進める。
    また、これらの検討を踏まえつつ、地方整備局等との意見交換を通じて発注者と認識を共有し、受発注者のパートナーシップを強化する。

  • ②民間工事における適正な契約関係の確立
  • ・ 民間工事における適正な市場秩序の確立には、もとより建設企業の決意と自信を持った受注姿勢が欠かせない。平成25年4月の「民間工事における適正な受注活動の徹底に関する決議」に基づき、適正価格での受注の徹底、適正工期の確保、適正な契約条件の確保について、改めて会員企業の決意を促す。

    ・ 平成28年度においては、「適正工期算定プログラム」を作成し、その普及を図ることにより、適正な工期の確保と週休二日を促進し、あわせて社会保険と建退共制度の適用等への発注者の協力を求める。
    また、建築士法の改正に合わせて平成27年4月に改訂した日建連設計施工契約約款の普及を図る。

    ・ また、建築工事には、地盤条件、埋蔵文化財、近隣対策、資機材の価格変動など契約時には想定し難い事情もあり、契約時点での想定と異なる事態が発生した場合の工期や設計変更などに関する発注者の対応や、リスク負担の在り方について、国としてガイドラインを示すよう要請する。

    (4)建設企業の基礎体力の強化

  • ①デフレマインドの克服
  • ・ デフレ時代に弱体化した建設企業の基礎体力の強化は、たくましい建設業を再生するための基礎的な条件である。

    ・ 建設企業は、公共、民間ともに市場環境が正常化に向かいつつある今日こそ、多年染着いたデフレマインドを脱却し、再生と発展に向けて力強い一歩を踏み出したい。
    建設企業には、こうした意識の転換の下で、企業の維持だけでなく、進歩、発展につなげ得る企業収益の確保を図ることが求められる。

  • ②施工管理体制の強化
  • ・ 基礎ぐい工事において、工事の施工プロセスに杜撰な対応が放置される事案が発生したことは遺憾であり、安全と品質を最優先とする前提で、かつ、効率性を確保しつつ、より的確な施工を徹底する。

    ・ 特に、日建連が策定した基礎ぐい工事の施工管理指針に基づく施工管理を徹底するとともに、国の策定した工事監理ガイドラインに基づく設計施工一貫方式における工事監理を徹底し、建築物の安全性の確保と建設業への信頼の回復に努める。

    ・ デフレ時代のスリム化と社員の高齢化により減?した技術者を確保し、次世代を担う優秀な技術者を育成するため、技術系学生への訴求、研究開発部門の体制整備、ワークライフバランスの改善等の諸方策を推進する。

    ・ 技術者不足の中で円滑な施工を確保するため、施工の平準化や、技術者制度の運用の改善と発注実務上の配慮について関係機関に要請する。

  • ③財務体質の強化と収益構造の多様化
  • ・ 建設企業の財務体質の強化に資するため、産業界の一員として企業税制等の改善要望等を行う。

    ・ 施工の上流にあたる企画・設計や、下流にあたる維持管理・更新、更には PPP・PFI、CM、PM、再生可能エネルギー事業等、会員企業の様々な分野への取組みを支援するため、これらの分野について調査、研究を行うとともに、制度面の改善と運用の合理化に関し、提言、要請を行う。

    ・ また、建設業に関連する政府等の政策、例えばインフラ再生を含む社会基盤整備のあり方、コンパクトシティ推進をはじめとした都市・地域政策、マンション建替え促進等の住宅政策、スマートシティの形成を含むエネルギー政策等についても、事業範囲の新たな展開の方向として建設業の立場から調査、研究を行い、関係方面に提言を行う。

  • ④海外展開の推進
  • ・ アジア諸国をはじめとした諸外国での事業展開は、収益構造の多様化においても、有力な選択肢である。
    そのため、海外建設協会と連携して会員企業の海外展開のための環境整備を推進する。

    ・ TPP、EPA、WTO 政府調達協定などの国際的な経済連携の動きに対し、状況に応じて適切な対応を図る。

    (5)建設事業の的確かつ円滑な推進

  • ①東日本大震災被災地の復興と福島第一原発事故の克服への貢献
  • ・ 東日本大震災の発生後5か年の「集中復興期間」には、地震・津波被災地域では地域の再建が本格化し、原子力被災地域でも復旧が進み、住民の帰還に向けた動きが見えてきており、建設業界は更にこれらに総力を挙げて取り組むこととなる。

    ・ 平成28年度からの新たな「復興・創生期間」においても基幹インフラの復旧や、住宅再建、まちづくりなどについて、被災者の方々が一日も早く復興を実感できるよう、除染事業を含むこれらの事業を着実に実施するため、国、地方公共団体等との連携の強化を図るとともに、 会員企業が保有する高度な技術力、マネジメント力の活用方策、適切な積算や工期設定、設計変更のあり方等に関する調査研究、ICT 技術の活用など、復興工事の円滑な実施に関する検討を行い、国、地方公共団体、東京電力等への提言、要請活動を実施する。

    ・ また、原発事故に係る、汚染水対策、放射性廃棄物の輸送・処理等に関する技術的検討に協力するとともに、廃炉措置、最終処分等、原発事故の終息に向けていずれ長期的な取組みが求められることを見据えて、幅広い学習に取り組む。

  • ②インフラ整備の推進
  • ・ 東日本大震災の復興事業や、オリンピック・パラリンピック関連施設の整備をはじめ、防災・減災、インフラ老朽化対策、国際競争力強化などの分野で社会資本のストック効果が最大限に発揮されるよう、公共工事の的確、円滑な施工を全力をあげて確保する。
    このため、発注者との連携を強化するとともに、建設技能者の処遇改善や現場の生産性向上の取組みを推進する。

    ・ 真に必要な社会資本整備の着実な推進や、建設技能者の処遇改善をためらうことなく進めるためにも、将来に向けての安定した建設投資の確保が何よりも強く望まれる。
    特に公共投資の安定的、持続的確保は、経済運営の基本であり、政府と政治に対し、積極的な提言、要請活動を展開する。

  • ③建築物の耐震性能の向上、安全・安心の街づくりへの貢献
  • ・ 発生が危惧される南海トラフ巨大地震、首都圏直下型地震等の大規模自然災害に備えるための国土の強靭化が官民をあげて対応すべき急務であり、耐震改修事例集の充実、ホームページによる情報発信等により既存建築物を含めた耐震化の促進に取り組む。

    ・ 「日建連建築宣言」の理念に基づき、安全・安心な建築、街づくりや、建築物の環境性能の向上に向けた活動を行うとともに、建築物が持つ文化的側面への関心を高め、建築文化を振興するための活動に取組む。

    (6)建設業の社会的責任としての活動の推進

  • ①災害対応体制の確立
  • ・ 日建連は平成27年4月内閣総理大臣から災害対策基本法上の「指定公共機関」に指定された。「指定公共機関」としての責務を果たすため、会員の BCP 策定率を一層向上させるための取組みや、国土交通省と日建連、日建連と会員企業、日建連本部と支部との連携のあり方等の検討を進め、的確な応災体制の確立を図る。

    ・ 特に、首都直下地震を想定した体制づくりとして、関東地方整備局を中心に進められている包括的災害協定への移行への協力、地方整備局や会員企業と連携した災害対応訓練の実施などを通じて、災害対応に遺漏なきよう万全を期する。

  • ②安全・衛生対策の推進
  • ・ 建設工事の施工に伴う安全・衛生の確保は、社会から強く求められる建設業の最も基本的な責務である。

    ・ このため、建設工事に起因する公衆災害や工事現場における労働災害の防止および快適な労働環境の構築に向けて、現場点検やパトロールの実施、優良現場の表彰、講習会の開催、現場用教育資料の作成等の取組みを効果的に推進する。

    ・ また、建設業のイメージ向上に向けて、これらの活動に真摯に取り組む姿勢を積極的にアピールしていく。

  • ③環境対策の推進
  • ・ 低炭素社会の実現、循環型社会の構築、生物多様性の保全等の環境対策は、一国の問題にとどまらず地球規模の課題となっていることから、平成28年4月に発効する建設業界の環境活動指針である「建設業の環境自主行動計画第6版」に基づき、多様な環境課題への取組みをこれまで以上に積極的、総合的に展開する。

    ・ このため、建設業が行う各種の環境活動の社会一般へのアピールや、会員企業への普及促進、行政および発注者とのコミュニケーションの充実を推進する。

    ・ また、原発の停止や火力発電所の老朽化の影響で、夏季および冬季の電力不足が今後とも懸念されることから、政府および電力会社の要請に応じて、工事現場を含めた節電対策に協力する。

  • ④適切な企業行動の実践
  • ・ 企業が国民の信頼を得るためには、適切な企業行動を実践することが必要不可欠である。
    このため、平成 25 年に策定した「日建連等企業行動規範」に基づき、コンプライアンスの更なる徹底を図るとともに、CSR を遂行する会員企業の取組みの推進を支援する。

    ・ 一方、災害復旧事業としての道路舗装工事に関して独禁法被疑事案が発生したのは誠に遺憾である。災害復旧など国民的要請の高い事業に積極的に取り組むことは建設業の基本的責務であるが、コンプライアンスの徹底は、それ以前の問題である。

    (7)建設業への理解促進

    ・ 建設業が大きな転換期を迎えたのを契機に、上記の諸課題に積極的に取り組む中で、建設業に携わる全ての者にとって自信と誇りを持てる産業としてのイメージアップを図る。

    ・ また、ものづくりこそが人間の営みの本質であるとの認識の下、ものづくり産業の復権をアピールし、その中で国民生活と経済活動を支える建設業の役割の大きさや、大規模災害発生時の応急復旧や被災地の復興にあたる建設業の社会貢献の姿への理解を促す。

    ・ そのため、広報誌、ホームページなど種々の媒体を活用するとともに、一般メディアへの積極的な訴求を通じ、若者、女性をはじめ国民各層に向けて、建設業や建設構造物の魅力と意義や、建設業界の意見、主張を効果的に発信する。

     以上、建設業が置かれる現状の認識と、日建連の平成28年度における重要課題への対応の基本的方向を示した。
    これらのほかにも対応すべき課題は多いが、諸活動の実施に当たっては、常に会員の総意と社会一般の意見を尊重し、内外に開かれた運営を行う。

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