三嶋遼太さん
舗装工
人や車が安全・快適に通行できるよう、道路の路面を整備する工事です。
特に多くの自動車が走行する高速道路は、下から「路体」「路床」「路盤」「基層」「表層」など複数の層で構成され、走行車両によって長期間連続してかかる路面への荷重が分散されるような構造になっています。
道路表面となる表層には、アスファルトで仕上げる「アスファルト舗装」、コンクリートで仕上げる「コンクリート舗装」があり、厚さ・平坦性を厳密に管理しながら専用の重機で施工していきます。
ほぼすべてが屋外作業であり、天候や気温の影響を受けやすい上に、道路の安全性にも関わる工程のため、品質の管理が重要となります。
舗装工・三嶋遼太(みしま・りょうた)さんは、1987年山口県長門市の出身。県立萩工業高校(※)で、建設工学科・土木コースを選択し、機械の操縦などを学び、卒業後に大成ロテック㈱へ就職、今に至る。
※県立萩工業高校は県立萩商業高校と再編統合し、2006年に県立萩商工高校として開校。旧県立萩工業高校は、2008年3月には最後の卒業生を送り出したのち閉校している。
この道に進んだきっかけは?
「高校2年生になる時に建築コースか土木コースかを選べるんですけれど、兄が大工なので、自分はあえて違う方向に(笑)と考えて、土木コースにしました。就職する時は、地元を出て東京に行きたいという一心でしたね」
大成ロテックは道路舗装工事専門の建設会社で、施工管理などを行う総合職と、国内でも数えるほどしかない特殊な重機の操縦を担当する専門職を募集している。三嶋さんは専門職として入社した。
「高校時代に車両系の特別教育があって、そこで舗装用の機械を見て関心を持ちました。こういう大きな重機を動かしたい、と思ったんです」
大成ロテックは、1960年代から高速道路の舗装工事を数多く手掛けてきた実績豊富な会社だが、舗装の現場は道路だけとは限らない。
飛行機の滑走路や駐機場、オートレース場、珍しい例ではダムの堤体表面を防水のために舗装するなど、全国に様々な現場がある。
三嶋さんも、これまでに北から南まで日本各地の現場に赴任し、舗装工事に従事してきた。
2020年にはその実績が評価され、所属する機械技術センターからの推薦で「建設ジュニアマスター」に選出された。
「建設ジュニアマスター」は、優秀な技術・技能を持ち、今後更なる活躍が期待される青年技能者を顕彰する国土交通省の制度で、三嶋さんは2020年度に選ばれた109人の一人だ。
現在、三嶋さんが配属されている新東名高速道路の現場では、伊勢原大山インターチェンジから、(仮称)秦野インターチェンジの間を舗装する工事が進められている。
「ここは関東圏なので、週末だけは自宅のある埼玉に帰れます。でも、地方の場合は単身赴任ですね。今までに、仕事でほぼすべての都道府県に行ったと思います」
施工中、気を付けていることは?
「走行する車の安全性や乗り心地に関わることなので、平坦に仕上げられるように常に気をつかっています」
アスファルト舗装の場合、「アスファルトフィニッシャ」と呼ばれる専用の機械でアスファルト混合物を敷きならしていく。フィニッシャの運転者からは舗装面の状況が見えないため、地上から舗装面をチェックし、平滑に敷きならすよう機械を調整する「アジャストマン」が付き添うことになる。三嶋さんの現在の役割は、このアジャストマンがほとんどだ。
「アスファルト混合物は、種類によっても若干違いますが、概ね150℃程度あるので、フィニッシャの周辺は常に高温です。でも立場上、そばを離れるわけにはいかないので、夏の炎天下ではかなり暑いですね」
現在、この現場には機械部 機械技術センターのオペレーター職員が三嶋さんを含めて3名いる。三嶋さんはその中で最年長。若い2人を指導しながら、品質の管理も行う。
「この仕事への応募人数が減っていて、機械職員の数は十分とはいえない状態です。当社は道路舗装専門の会社では大手だし、就職先として魅力もあると思うんですけど、あまり知られてないというのが現状ですね」
大変なことも多いが、その分達成感も味わえるのがこの仕事の魅力だ。特に高速道路の舗装工は数年にわたる大事業の締めくくり工程でもある。
「例えばトンネルだったら、山の中を掘り進むのに年単位でかかるわけですけど、自分は舗装だけなので最後の数カ月くらいしか関われません。でも、その最後の仕上げを担当することで、本当の意味での完成を見ることができます。まさに『地図に残る仕事』なので、自分で走って確かめられるのもいいですね。家族を車に乗せて走ることもありますよ」