藤澤穣さん
電工(電気設備工事)
電力会社から供給される電気を、建物の各部屋や施設まで配線でつなぎ、使えるようにする工種です。
また工事現場では、仮設の現場事務所や各種電動機械を使う作業にも電力が欠かせないため、工事の着手時から撤収するまでの間、電気関係全般の作業に関わります。
電気に関する専門知識はもちろん、効率的な配線計画を考えたり、危険な高圧電気も取り扱ったりするなど、電気設備工事のスペシャリストです。
藤澤穣(ふじさわ・ゆたか)さんは、1995年東京都生まれの25歳。都内の工業高校の電気科に進み、電気工事の仕事を目指した。
高校で電気科を選んだ理由は?
「父が電気工事の会社に勤めていたからです。父は現場に出る職種ではありませんが、何となく仕事の内容はわかったので興味を持ったのです。工業高校では、配線のつなぎ方とか、電流と電圧の関係などを学びました」
工業高校を卒業後、「建てた建物に実際に電気を通してみたい」ということで、電気工事の会社に就職。4年ほど勤めた後、現在の東京電工㈱に転職した。
この仕事に就いてからおよそ7年。現在は建設現場での電気工事に従事している。
現在藤澤さんは、2棟の集合住宅新築現場に勤務しており、2棟のうち1棟の電気工事を藤澤さんが1人で担当する。
「もちろん、最初のケーブル引き回しなど大掛かりな作業の時は、応援を呼んで3~4人で対応することもありますが、1部屋ごとの配線などは原則1人です」電気などの設備に関する工事は、躯体が完成した後から始まると思われがちだが、
「電気工事で担当するのは、建てている建物だけでなく、工事そのもので使う電気も含めて全部なんです。そのため、うちの建築の担当さんと一緒に、最初から最後までずっと現場にいますね」
普段の生活ではあまり意識をしないが、電気がなければ私たちのほとんどの活動に支障をきたすのと同様、工事現場でも電気が必要な場面がたくさんある。
型枠用の木材を切る電動カッター、ボルトを締める電動工具、夏場の作業には扇風機も使うし、建物ができてくれば内部に作業灯も設置する。
用途によって出力が異なるため、100V・200Vなど複数の電圧も用意しなければならない。仮設の工事事務所内にもパソコン・照明・コピー機などが当然のように完備されている。
そのすべては電気工事会社の確実な仕事の上に成り立っているのだ。
電気工事をやっていて、特に大変な部分は?
「我々の仕事をシンプルに表現すれば『配線を引っ張ってつなげる』ということなのですが、そのためにいろいろな付帯作業が出てくるのです。
天井から照明を吊るすとしたら、その周辺を補強しなければならないとか、壁に電気のスイッチやコンセントの差込口を設置するために石膏ボードや軽量鉄骨を加工しなければならないとか。他職さんにお願いできることもありますが、自分で取り付けることも多々あります」
現場全体の電気のケアをしながら、新築建物の配線も遺漏なく行わなければならない。
「建物がほぼ完成して、器具も取り付けて、電気が無事通じたときは『やりきった』という達成感がありますね」
そもそも、建物の設計図には電気の配線などの仕様は含まれているのだろうか?
「大抵はちゃんと図面上に書かれています。その上で、現場代理人の方が施工図にして、どういう風に進めればいいか、作業手順が決まっていれば、それに従って作業ができます。
ごくたまにですが、その部分があいまいな時もあるので、そういう場合は自分たちで計画したり、現場代理人とよくコミュニケーションを取り合って作業を進めたりすることもありますね」
私たちの暮らしに欠かせない電気を、ストレスなく使うための電気工事の重要性は、これからも増していくに違いない。
もし後輩から、「電気工事の仕事をしたい」と相談されたらどうしますか?
「まずは、『考えているほど簡単な仕事じゃないよ』って答えますね(笑)。でも日常生活を支える大切な仕事なので、今後も需要が減らない業種だと思います。ぜひ挑戦してもらいたいです」でしょうか」