Q1
建設業として開示すべき標準的は環境情報はどのような内容でしょうか?
日建連としては、2021年5月に公開した「日建連 環境情報開示ガイドライン」に基づき、会員各社がある程度同じ考え方で情報開示することを目指しています。
自発的な情報開示、要請を受けての情報開示を含めて、以下の7項目に分類されます。
回答欄にて、項目別の標準的な開示・対応方法を概括します。
①:WEB、レポート
②:格付を意図したアンケート
③:省庁・コンサル・研究者からのアンケート
④:客先からのCSR調達を意図したアンケート・誓約書等
⑤:個別案件での環境提案コンペと一体となった情報開示要請
⑥:NGO等からのアンケート
⑦:マスコミからのアンケート・取材
①自主的に公開する内容として、WEB、レポート全体で、「日建連 環境情報開示ガイドライン」の章毎に解説されている「建設業として記載すべき項目」を網羅していることが望ましいです。一方で、FTSE、MSCIなどのESG機関投資家によるWEB、レポート内容からの勝手格付を重視する場合は、個社での対応は困難です。外部コンサル等の活用を推奨します。
②日経スマートワーク・SDGs経営調査、東洋経済CSR調査などが挙げられます。環境関連の設問に関しては①と同様に日建連ガイドラインに基づいた回答を推奨しますが、前者は環境部門部署単独での回答は困難です。経営企画・広報部門等を事務局とする全社対応を推奨します。
また、CDPは2000年に発足した国際NGOで、世界主要企業の環境活動に関する情報を収集・分析・評価、機関投資家向けに開示しています。「気候変動」「ウォーターセキュリティ」「フォレスト」のカテゴリー毎に実質的に世界的な環境格付の性格を有しています。対応の有無は各社の経営判断によりますが、相当のマンパワーが割かれることになり、上位ランク取得のためには外部コンサル等の活用を推奨します。
③環境部門が窓口となり、専門部署と調整の上できる範囲で回答するのが望ましいですが、一般的な質問等は、WEBやレポートを見ていただけば足りるように開示情報を整備しておきましょう。 学生からの研究・論文作成目的のアンケートに対しては、人事部門とも連携し、リクルーティングとの兼ね合いを含めて対応を判断します。
④製造業を中心に、原材料サプライヤーと建設業を一括りにしたアンケートが増えています。
環境関連のマネジメントの仕組みの整備状況に関する設問は、ISO14001事務局等が窓口となって回答します。
特に化学物質管理系のアンケート等では、原則として設問における「製品」=「建物」という解釈で回答しますが、我々建設業はPRTR制度(化学物質排出把握管理促進法に基づく届出制度)の適用外であること、現場ではSDSによって安衛法に基づいたリスクアセスメントを適切に実施し、それらを廃棄する際は廃掃法に基づき適切に処分していることを基本として回答します。
また、主にスズ、タンタル、タングステン、金などの紛争鉱物を対象にしたアンケートに対しては、
「建物主要部材では当該物質自体を使用していない。溶接棒や刃物等の工具や建物内電子機器等で使用される場合は、メーカー側で適切に対応されていると認識している」ことを基本として回答します。
⑤コンペの趣旨に沿った自社の環境対策の取組み、実績等を開示できるようにしておくことが第一歩です。
⑥ネガティブな情報も開示する必要がありますが、環境対応部署だけではなく経営企画部署等との調整が必要です。正直に回答することを基本としますが、補足説明が許容される場合は、「努力をおこなっているが、達成できていない」「まだできていないが、検討を始めている」など、課題認識と対応検討をおこなっている場合は、その旨を説明します。
⑦我が国の2050年CN宣言以来、アンケートが急増しています。多くが経営企画・広報部門等と共同で回答する内容です。社内で対応ルール・分担を決めて適宜回答します。定期的に同一内容のアンケートが届く場合も多いため、回答記録を残します。環境活動の成果等に関する取材の場合は、有益な環境情報として積極的に開示し会社のアピールに活用して下さい。
Q2
日建連が実施しているCO2排出量調査について、概要を教えて下さい。また、温室効果ガス排出量の算定・報告の国際的な基準との違いはありますか?
Q3
建設業が排出するCO2は全産業の1%程度でしかありません。また、建設業のスコープ1~3全体のなかで、作業所からのCO2は1割未満です。作業所でのCO2削減より、もっと優先すべき(注力すべき)課題があるのではないでしょうか?(主に現場社員からの声として)
Q4
建設業のスコープ3の考え方、顧客から見たスコープ1/2/3、それらを含めたサプライチェーン排出量の算出方法について教えてください。
スコープ3の15カテゴリーはQ2【解説・補足】を参照して下さい。
建設業のスコープ3の中で圧倒的に大きいのは、Scope3-1(購入した製品・サービス)と、Scope3-11(販売した製品の使用)です。
Scope3-1は、セメント、鋼材、アルミ、ガラスなど建設資材の製造時に排出されるCO2を指します。
Scope3-11は、引渡した建物の運用時に排出されるCO2を指します。
「日建連 環境情報開示ガイドライン」では、Scope3-1,11に加えてScope3-5(事業から出る廃棄物)、Scope3-12(販売した製品の廃棄)の算出方法を開設しています。
また、建設業にとってのScope1/2/3と、顧客から見たScope1/2/3の関係は下表のとおりです。
※1:建設業のScope1,2及び3-1,4,5は、顧客のScope3-2に分類されることが多いが、販売用不動産の建設時などはScope3-1に分類される場合もある。
Q5
工事で排出されるCO2を予測するにはどのような方法がありますか。
Q6
現場のCN達成に向けて、CO2排出量(スコープ1)の削減はどう進めたらよいですか。
それを協力会社にどのように要請したらよいでしょうか。
Q7
業界一体となった取組み、他産業との取り組みについて教えて下さい。
Q8
現場の電力(スコープ2)対策の進め方について教えて下さい。
また、太陽光発電設備の導入や使用する電力の転換によりCO2排出量を削減する方法があります。再生可能エネルギー由来の電力や非化石証書などの環境価値を組合わせ、実質的に排出ゼロとするプランを販売する電力会社もあります。
※環境省審査済の再エネ100%電力メニュー一覧:http://www.env.go.jp/air/ichiran/ichiran.pdf
Q9
なぜCO2の原単位だけでなく総量を減らさないといけないのですか?
Q10
カーボンニュートラルに取り組むにあたり、役立つ情報はどこで得られますか?
企業がカーボンニュートラルに取り組むにあたって、役立つと思われる情報をまとめました。
「キーワード・概要」や「内容分類」を参考に、情報の収集にご活用ください。
※○印は関連あり
情報元 | リンク先 | キーワード・概要 | 内容分類 | |||
全 般 | 作業所 | 営業企画 | 設 計 | |||
CDP | CDP 公式サイト | CDPジャパンの公式サイト | ||||
JCLP | JCLP(日本気候リーダーズ・パートナーシップ) 公式サイト | RE100・EP100・EV100の日本地域パートナーであるJCLPの公式サイト | ○ | |||
JPX | JPX ESG Knowledge Hub | 上場会社がESG情報の開示に取り組む際に役立つ情報を提供 | ○ | |||
RE100 | RE100 公式サイト | RE100の公式サイト | ○ | |||
SBT | SBT 公式サイト | SBT公式サイト | ○ | |||
TCFD | TCFD 公式サイト | TCFD公式サイト | ○ | |||
内閣官房 | 防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策 | 防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策 | ○ | |||
国・地方脱炭素実現会議 | 地域脱炭素ロードマップ | ○ | ||||
閣議決定 | 科学技術・イノベーション基本計画(閣議決定) | 科学技術・イノベーション基本計画 | ○ | |||
経団連 | Policy(提言・報告書) 環境、エネルギー | 2050年カーボンニュートラル(Society 5.0 with Carbon Neutral)実現に向けて | ○ | ○ | ||
環境省 | 脱炭素ポータル | 脱炭素社会の実現に向けた、国の取組、トピックス、新着ニュース、関連サイトなど | ○ | ○ | ||
気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD) | 「TCFDシナリオ分析実践ガイド」がダウンロード可能 | ○ | ||||
グリーン・バリューチェーンプラットフォーム | 排出量算定に関するガイドライン、排出原単位データベース、排出量算定に関するQ&A、自己学習用資料、算定事例など | ○ | ||||
地球温暖化対策計画(閣議決定) | 地球温暖化対策計画 | ○ | ||||
報道発表一覧 | 報道発表資料の最新1週間分を表示(検索も可能) | ○ | ||||
ZEB PORTAL(ゼブ・ポータル) | ZEBに関する情報、ZEB化実現までの流れ、事例紹介など | ○ |
情報元 | リンク先 | キーワード・概要 | 内容分類 | |||
全 般 | 作業所 | 営業企画 | 設 計 | |||
温暖化対策林野庁の概要 | 温暖化対策に向けての個別対策 | 温暖化対策に向けての個別対策 | ○ | |||
2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 | 2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 | ○ | ○ | |||
エネルギー・環境 | 経済産業分野におけるトランジション・ファイナンス推進のためのロードマップ策定検討会 | ○ | ||||
審議会・研究会(新着情報) | 各種審議会・研究会の開催案内 | ○ | ||||
経済産業省 資源エネルギー庁 |
スペシャルコンテンツ(記事一覧) | エネルギー安全保障・資源、地球温暖化・省エネルギー、 再生可能エネルギー・新エネルギーなど |
○ | ○ | ||
再生可能エネルギーとは | 各種再生可能エネルギーの紹介、発電設備設置までの流れ、事業化事例、次世代エネルギーパークの紹介など | ○ | ||||
農林水産省 林野庁 |
地球温暖化防止に向けて | 森林の果たすべき役割、伐採木材製品の取扱いについて | ○ | |||
2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略について | 食料・農林水産業分野の成長戦略 | ○ | ||||
建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量の表示に関するガイドライン | 建築物に利用した伐採木材製品の炭素貯蔵量の計算・表示方法 | ○ | ||||
国土交通省 | 第5次「社会資本整備重点計画」(閣議決定) | 第5次社会資本整備重点計画 | ○ | |||
サードステージとりまとめ | 国土交通技術行政の基本政策懇談会サードステージとりまとめ | ○ | ||||
国土の長期展望(最終とりまとめ) | 「国土の長期展望」最終とりまとめ | ○ | ||||
国土交通グリーンチャレンジ | 国土交通グリーンチャレンジ | ○ | ||||
報道発表一覧 | 2050年カーボンニュートラルの実現に向けた住宅・建築物の対策をとりまとめ | ○ | ||||
BIM/CIMポータルサイト | BIM/CIMの基準・要領等、研修コンテンツなど | ○ | ||||
日建連 | わたしたちにできる地球温暖化防止 | 建設業で働く方々を対象に地球温暖化防止についてわかりやすく紹介 | - | ○ | ||
省燃費運転研修 | 省燃費運転研修のカリキュラムと資料、実技講習に関する案内 | - | ○ | |||
低炭素型コンクリートの普及促進に向けて | パンフレット「低炭素型コンクリートの普及促進に向けて」がダウンロード可能 | - | ○ | |||
建設業における軽油代替燃料利用ガイドライン | 「建設業における軽油代替燃料利用ガイドライン」がダウンロード可能 | - | ○ | |||
施工段階におけるCO2排出量・削減活動実績 | CO2 の削減実施方策に基づく、達成状況の定量的な把握を目的とした実態調査結果など | - | ○ | |||
サステナブル建築 | サステナブル建築を推進に資する取組み活動など | - | ○ |
〇 日建連におけるCO2排出量調査(以下、「日建連調査」という。)
※建設業は元請と協力会社が一体となって1つの工事を行うという他業種では見られない特徴があります。また、複数企業で特定JVを構成し、1つの工事を行う場合もあります。工事の施工計画の最終責任は元請やJV スポンサー会社にあることから、日建連調査では、元請が代表して工事全体を自社分として報告することとしています(例:協力会社が現場に持ち込み使用した重機等からのCO2排出量も元請が「自社分」として報告)。
※個別工事における日建連調査の報告範囲は上記のとおりですが、各社が自社排出量を集計する場合、JV工事については工事全体のCO2排出量のうち自社JVシェア分のみを自社排出量とします。
〇 国際的基準
[出所] サプライチェーン排出量算定の考え方 パンフレット 環境省
http://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/tools/supply_chain_201711_all.pdf
・環境省・経済産業省は、GHGプロトコルに整合した「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」を作成・開示しています。
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/tools/GuideLine_ver2.3.pdf
【関連サイト】環境省・経済産業省「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム」
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/estimate_tool.html
〇 日建連調査と国際的基準の違い
【対象エネルギー】
【範囲】
【CO2排出係数】
【再エネ電力のオフセット】
一方で、建設業のサプライチェーンCO2がわが国全体に占める割合は約42.7%と大きく、
他産業から建設業への期待も大きい。
1995年時点の建設業の環境負荷推定
出典:「産業連関表を利用した建設業の環境負荷推定」
漆崎昇、酒井寛二【日本建築学会計画系論文集 第549号(2001年11月)】
1995年時点の建設業の環境負荷推定
出典:「産業連関表を利用した建設業の環境負荷推定」
漆崎昇、酒井寛二【日本建築学会計画系論文集 第549号(2001年11月)】
予測方法例
〇実施例
〇他産業等との連携が必要な横断的な取り組み
発注者・行政:グリーン調達、環境配慮の発注仕様
資材メーカー:ゼロカーボンスチールのロードマップの共有、低炭素コンクリートの普及
車両・重機 :革新的建設機械の導入、燃料の導入 水素
土工事業者 :資材・建設発生土・副産物輸送の効率化
再エネ事業者:再エネ導入、クレジット調達
副産物処理 :As to As(ストレートアスファルトの削減)
自治体 :グリーンインフラの導入、維持管理