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大手三団体が統合し、新たに日本建設業連合会(新日建連)が4月1日からスタートした。時あたかも、東日本大震災が日本列島に惨事の爪痕を残し、これから建設業の復旧・復興への協力が求められているさなかでの、その意味でも歴史に残る船出となった。
新団体のキャッチフレーズは「確かなものを地球と未来に」であるが、建設産業の社会的役割をズバリ表現していると思う。いま現下に直面している東日本大震災で最も問われるのが、「確かなものを、地球と未来に」という大局と先を見通した対応だからである。建設産業界が、ただただ言葉を失うばかりの衝撃を受けている大震災と原発事故に対し、建設産業ゆえの、安全・安心の「確かなものを」1秒でも早く応える、そういうメッセージとなっている。
4月27日には通常総会を開き、スタートの年度の人事や事業計画が決められた。法人会員数14五、団体会員数5、委員会数24、事業計画事項233(重点10項目)という大組織が動き出した。
新日建連は、これから建設産業界の中核団体として活動することになる。日本を代表する総合建設業を法人会員とし、土木、建築、安全対策、鉄道建設という四つの事業本部を擁し、道路、海外、土地改良、埋立浚渫、ダムという五つの事業団体、さらに北海道から九州まで九支部を持つ業界団体の誕生である。その組織力のスケールが中核の、中核たるゆえんである。
つまり新日建連の最大の特徴は、建設産業の総合力を結集しているということになる。だから組織としては確かに「建設業界団体」ではあるが、活動や発信や存在意義はもっと広義の「建設産業団体」としての影響力を持っているのである。建設業界に止まらず、産業的なスケールを発揮してほしいというのが、私の期待の一つだ。
さて、私が新日建連に求めたいのは、産業の中核団体としての発信と提言であり、そのための委員会活動の活性化である。24の委員会を動かすには、大変な労力と人的パワーが求められるが、逆に言うと、それができるのが新日建連のアイデンティティーである。24の委員会は、これまで三団体が築いてきた「財産」であり、その意味では性格の異なる委員会活動が統合されたものだと言える。だが、むしろ性格の異なりが統合されることで、新たな展開が期待できると思っている。三団体が一つになっただけではない、一つになったことによる「集中と選択」により、まったく質の新たな団体になったのだということを知らしめる委員会活動が求められているように思う。
一例をあげてみよう。
旧日本土木工業協会の委員会は、官民の意見交換会を軸に公共発注者への提言を中心にした政策的課題が多かったし、旧建築業協会の委員会は建築関係の実務的技術指針に関連するものが多かった。その意味では新日建連は、政策から技術まで、すべての問題を網羅し、会員の意見を集約できる委員会の磁場を整えたと言える。土木本部と建築本部が身近になり、お互いのいいところを吸収し合える環境が整っている。
官民の意見交換だけでなく、民間発注者との意見交換の場を模索するのもいいし、旧建築協のように土木の技術指針にもっと突っ込んだ検討をするのもいい。「設計施工」のあり方を両本部が一緒になって検討することで、両分野の設計施工問題に思わぬヒントが与えられるかも知れない。土木・建築一体となった総合的な大プロジェクト構想を提案することも可能になるだろう。
委員会活動を活性化すると同時にそれを発信し、新日建連の「見える化」を実行することも期待したい。そのことにより、きちんと社会にモノ言う業界団体になってほしいと思うのだ。東日本大震災への対応では、そのスピード、発信で「見える化」を十分果たしていると思う。
新日建連は発足前から、発災の3月11日以降、8億円以上の義援金拠出、救援物資の提供、迅速な現地活動、各社への連絡と情報提供、さらに全国の支部組織をフル動員し、この一カ月は、前線と後方を有機的につないできたことは目覚ましい。素早いその対応はキャッチフレーズの「確かなものを」掲げていることの証左でもあったといえる。
さらに4月15日には、速やかに被災地を中心とした「復興」への取組みを本格的に開始するべきだとし、日建連も復興に向け全力を傾注すると宣言した。この場合、「全力」という表現こそが、新日建連の真骨頂を示すものになろう。「土木」と「建築」ではなく、「土木・建築」への一体となった総合的な「全力」という意義が込められているのだと思う。
この提言では、指揮命令体制の確立、広域的な復興基本計画及びインフラ整備計画の策定、地域づくり・まちづくりの支援、財源の確保、雇用の確保、電力・エネルギー需給対策の策定、「産・官・学」一体となった復旧・復興への取組み―という七項目を指摘した。提言は、初めて開催した基本政策審議会に諮り、問題意識をまとめたものであり、このような発信を素早く行うところに新団体としての意気込みがうかがえる。
その提言では、「大震災からの〈復興〉は、単なる原形の復旧ではなく、被災地の新たな地域づくり、まちづくり、更には日本全体の新たな創造を目指す営みである」とあるが、まさにその通りだ。これから問われるのは、長い復興時間において新日建連の組織力・機動力・技術力、この三つの力をいかに発揮して持続させていくのかということだろう。
4月27日の通常総会で就任した、野村哲也会長のあいさつの中で、震災対策についての次の言葉が印象的であった。
「まずもって命を守ることができなければ、次の目標は存在しない、そう申し上げても過言ではない」「やはり、道が通れる、橋が渡れる、水が飲める、トイレが使える、住むところがある、お店が開いている、工場が動いている等々、そうした普通の生活を守り支えていくことが、われわれの仕事のベースにある、このことを改めて認識しておくことが大切なのではないでしょうか」。
新日建連は、国民や被災者のために何ができるか。それは「普通の生活を守り支える」というものづくりの目線を堅持し、「確かなもの」を駆使して、24の委員会をフル回転し、九の支部を通じ地域に結びつき、発注者や関係者と問題意識を共有し、そして広く国民に発信する「産業団体」の王道を歩んでほしいと思う。
ぐるりと建設業界を見回して、王道としてのモノを言う「業界団体」があまりに少ないからこそ、新日建連にはそれを期待する。
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