三重之塔請状
(三重塔作り様(仕様)の記述部分は省略)
右
惣代銀合せて七拾貫目也
右、南宮三重之塔御造営諸職の分にもくろみ目論見、右の代銀に相き究め、注文さし指上げ申し
候処に、万事一式に仰せ付けられ候条、たしか慥に御請け申し候。随分念を入れ、来年
七月以前にきっと急度仕立上げ申すべく候。大工仕事少しも手ぬきつかまつ仕るまじく候。たる垂き木
角木、はね年木のかため、其外何方にても、かための所は御目に掛けて仕立申すべ
く候。御意に入らざる所は何ケ度も、御好み次第に仕直し申すべき候。も若し、右
の御注文にかきおち書落御座候とも、定りたる義は、諸職の分異ママ儀なく仕るべく候。葺瓦
の義、取分け念を入れ候への御事、其意を得奉り候。そそう麁相にいたし、いてわれ損
じ申し候はば又立前大工仕事など、あ悪しく仕り、ゆがみ、ひづみ出来し候時は、
たと縦い五年、三年過ぎ候とも、何も仕直し申すべく候。其のためたしか慥なる請人を立て、
則ち連判仕り指上げ申し候間、本人とどこおり何角滞の義御座候はば、万事請人より仕立上
げ申すべく候。 猶其上にも無沙汰仕り候はば、本人の儀は申すに及ばず、請人と
もに、家屋敷、家財残らず召上げられ、くせごと曲事に仰せ付けらるべく、其時に至り一
言のことわり御理申し上げまじく候。後日のため請状よ仍ってくだん件の如し
寛永十九年午極月十四日 久 保 権 兵 衛 印(花押)
七条
請人 内藤一郎右衛門 印
三条材木町
岡田將監殿 同 さかや二郎兵衛 印(花押)