けんせつ小町プロモーション専門部会
【株式会社奥村組「千代田のキャッツアイ☆」との意見交換会】
2022年6月30日(木)14:00~16:30
千代田幹線工事所(東京都千代田区)
当日スケジュール
◯挨拶、参加者自己紹介
◯移動・シールド工事現場見学・全体集合写真撮影
○千代田のキャッツアイ☆ 活動の紹介
○日建連 けんせつ小町 活動の紹介
○意見
「千代田のキャッツアイ☆」のガイドで現場見学
奥村・大豊建設共同企業体(㊕)が施工を担当している千代田幹線工事は、東京都千代田区飯田橋から港区港南までの全長約8.7㎞に千代田幹線を新設する巨大プロジェクトです。2021年7月17日に開催したオンライン現場見学会では、発進基地から千代田幹線内、シールドマシン(トンネル掘削機)が稼働する様子などを、リアルな現場見学会に参加しているような臨場感をもって配信しました。オンライン配信による現場見学会は、日本建設業連合会にとって初の試みでしたが、多くの方に視聴いただき、とても好評でした。
オンライン現場見学会「あしたねLIVE 地下60mの巨大トンネルに潜入!」
今回、けんせつ小町プロモーション専門部会との意見交換会に参加したのは、千代田幹線工事に関わる株式会社奥村組のけんせつ小町工事チーム「千代田のキャッツアイ☆」です。奥村組の西沢工事所長から、「ここ数年で女性社員がどんどん増えていますが、これはけんせつ小町の取り組みによるところも大きいのではないかと思います。性別や年代で考え方は異なります。けんせつ小町からの情報発信が、性別や年代を超えてお互いの気持ちや考えを理解し合う助けとなると思っています」との挨拶に続いて、千代田幹線工事について紹介する動画を視聴した後、「千代田キャッツアイ☆」のメンバーの案内で現場を見学しました。
けんせつ小町委員会プロモーション専門部会の活動紹介
現場見学会の後に行われた意見交換会では、けんせつ小町委員会プロモーション専門部会の春日部会長がけんせつ小町の活動について説明を行いました。
常設の委員会として設置された2015年当初は、作業所における女性用のトイレの設置や、ユニフォームの見直しなどハード面の整備に取り組んでいましたが、「現在は活動の裾野が広がり、男女問わず誰もが働きやすく、そして働き続けられるようにしていくための、意識改革を促すセミナーや表彰、けんせつ小町登録チーム情報のSNSでの発信といった活動を行っており、徐々にけんせつ小町の活動が盛り上がってきたと感じています」と春日部会長。
シールや垂れ幕などのグッズ作成、オンラインによる現場見学会やけんせつ小町工事チーム同士の交流会の実施、活動コンセプトを春日部会長が紹介しました。
「千代田のキャッツアイ☆」の活動紹介
「千代田のキャッツアイ☆」の活動拠点である千代田幹線工事所では、プロモーション活動に力を入れており、「魅せる現場」を意識しながら現場見学会を実施してきました。通常の業務を滞りなく進めながら現場見学会を実施するのは大変ではありますが、見学者を受け入れ続けてきたことで変化が起きているそうです。
例えば、意見交換会にも参加した奥村組の池澤さんは、「学生時代にたくさんの現場を見学しましたが、ここは他社の現場と違う雰囲気だったので奥村組への入社を決めました」と入社までの経緯に触れました。
「千代田のキャッツアイ☆」の活動には、男女関係なく、JV企業も一緒に参加しており、「性別や所属している会社に関係なく、現場で起きている事柄について自分にできることはないかなと一緒に考える。お互いに意見を出し合って、育て合いをしているような感じです」と奥村組の南部さんから報告がありました。
池澤さんのように現場見学会をきっかけに入社を決定する学生が増える傾向もあることから、社内で「魅せる現場」についての取り組みをレクチャーすることもあるそうです。南部さんは「みんなが現場を楽しもう、いい環境にしていこうと思って活動すれば現場は楽しくなります。特に上に立つ人が柔軟に対応してくれていることが大きいです」と話しました。
意見交換・フリーディスカッション
【働きやすい現場づくり】
(千代田幹線・吉田副所長)この現場が開設された時に発進基地の3階部分のレイアウトを女性社員にお願いしました。すると更衣室・トイレへの動線を男女で分けたいと言われてなるほどと思い、すぐに実行しました。副所長である私だけで決めたことはほとんどなく、一緒に働く人と話し合って決めることを大事にしています。
(千代田幹線)千代田幹線は現在7㎞くらい整備が進んでいるので、発進基地まで戻るには時間がかかります。急に体調が悪くなった時など人目を気にせずに休憩できるようにシールド坑内の休憩場所にカーテンを設置しました。お互いが働きやすくなるための改善は、すぐに実行するようにしています。
(部会委員A)自社でも現場の雰囲気を大切にしたいと思ってこれまで自分なりに働きかけてきたのですが、現場のトップである所長によって雰囲気が変わると思っています。トップや先輩社員の心がけが大事ですね。
(部会委員B)友達感覚というのは言い過ぎかもしれませんが、若い社員でも話しやすい雰囲気づくりを心がけています。何でも気軽に話せる信頼関係が、仕事にも良い影響をもたらすと考えています。
(千代田幹線)私は事務担当で施工に携わる皆さんとは少し違う立場なので、私には話しやすいこともあるだろうと思って、なるべく話を聞くようにしています。若手の社員が所長などには言いにくいだろうと思うことは私から伝えて、世代間の橋渡しになろうと思っています。
【アンコンシャスバイアスを取り除くために】
(千代田幹線)この工事所には、育児休業を取得した男性社員もいます。最初は男性で育児休業を取得するのかと驚かれていました。ただ、子育てに限らず困ったことがあればみんなで助け合わなければと思っています。誰かが急に休むことになった時でも、他の社員がサポートするようにしています。
(部会委員C)私は建築の現場で働いていて、ハード面は整ってきたと感じています。けれどソフト面では課題が多く、本当にアンコンシャスバイアスが働いているなと感じます。現在、フレックスで働いていますが、「フレックスではこの現場は難しい」とか、「土日に働けないなら無理」とか、今の時代に言うべき言葉ではないと頭では分かっているのに無意識に言葉が出てしまう人もいます。法的にもこれから残業は削減していかなければならないので、フレックスでは難しいと言っている場合ではなくなるはずです。ソフト面をどう改善していくのかが課題だと思っています。
(部会委員D)ソフト面の改善ということでは、今回の意見交換会で伝わってきた千代田幹線工事所の雰囲気は素敵だなと思いました。女性活躍推進企業認定「えるぼし」について調べたときに、奥村組が「えるぼし」の最高ランクである3段階目の認定を受けておられるのを知りましたが、千代田幹線工事所の働く環境づくりは、まさしくそれにふさわしいと感じました。
【女性のキャリアパスについて】
(部会委員E)女性はキャリアを積んでいる過程で出産や育児などライフイベントが入ってきて仕事を休むことになることが多く、休むことで男性と比べて差がついたように感じたりします。その対策として、入社して短期間で研修を重ねてスキルアップを図るなどしているのですが、まだ最善の策は見つかっていません。
(部会委員C)子どもが生まれたら丸2年は休みたいという人もいれば、なるべく早く復帰したい人もいます。価値観が多様化しているので、一つの回答では対応しきれないです。価値観の多様化は男女関係なく起きていることで、これから長く働き続けてもらうためにはどうすべきなのか、私の会社でも模索中です。
(千代田幹線)この現場では本当に理解のある上司や同僚に恵まれていますが、建設業界全体を変えるにはロールモデルが少ないと思いますので、たくさんのロールモデルを知りたいです。また、私の周囲には育休明けで働き始めたばかりの先輩が何人かいますが、働き方はそれぞれ違います。どういった働き方が自分に一番合うのかなと悩みます。ただコロナ禍で、以前は業務上無理だと言われていたテレワークへの取り組みも少しずつ進んでいて、行動する前に無理だと思うことは進展を妨げる要因になると感じました。
(部会委員E)自社でロールモデルを見つけるのは難しい。しかし、けんせつ小町の活動を通して、他社のロールモデルを集め、「こういう方法だってあるよ」を様々な方法で紹介できたらいいですね。