耐震診断の結果、耐震性能が所定のレベルに達していないと判断された場合には、基本的に耐震補強の検討を行うこととなります。
耐震補強の検討結果により補強工事を行うことを耐震改修といいます。耐震改修には、下図のように耐震構造のまま改修を行う工法((狭義の)耐震改修)、制震構造へ改修する工法(制震改修)、免震構造に改修する工法(免震改修)があります。
震改修を行うに当たり、まずその建物に応じた目標性能を設定する必要があります。一般の建物では、現行の建築基準法が定める最低基準に従い、中小地震に対しては無被害で機能保持し、震度5強から6弱程度の大地震に対しては被害を軽微・小破程度にとどめ、さらに震度6強からの強大な地震に対しても建物が倒壊することなく人命を保護することを目標として設定されています。
それに対し、学校など大地震後に避難施設として使用する建物や、病院、防災本部となる庁舎などの公共建物など大地震後にも機能を維持する必要のある建物では目標性能を上げる必要があります。このような建物の耐震補強の場合は、目標性能に応じて耐震性能を建築基準法の1.5倍(レベルA)または1.25倍(レベルB)高く設定して補強計画を立てます。
一般の建物においても、公共建物と同様に目標性能を上げることももちろん可能ですが、コスト等を考慮して総合的に決定することが大切です。
さらに、業務継続の観点から耐震改修計画を進める場合、構造体の丈夫さだけでなく、電気や空調、衛生などの「設備」、つまり建物を使用する上で必要な「機能」や、仕上げ材などの二次部材への対策も考慮する必要があります。
耐震改修工法と地震時挙動イメージ図
目標レベルと適用構造概念図
建物そのものの強度増加もしくは靱性(変形能力)向上、
またはその組合せによる改修方法です。
伝搬されてきた地震力を建物自身で直接受け止め、抵抗するように改修する工法です。
制震装置(ダンパー)を各階の柱や壁に組み込み、地震エネルギーを吸収して振動を減衰させる改修工法です。
(性能発揮をするためにはある程度の建物変形が必要)
免震装置を建築物の基礎下や中間階に設けることで、建物の周期を長くして地盤から伝わる地震力の入力を大幅に低減する改修工法です。
耐震改修工法と補強の効果概念図