ACe建設業界
2011年6月号 【ACe建設業界】
ACe建設業界
特集 人づくり
 第1回 「匠」
被災者の声が
 将来像をつくる
天地大徳
遠近眼鏡
世界で活躍する
 日本の建設企業
建設の碑
現場発見
BCS賞受賞作品探訪記
フォトエッセイ
目次
ACe2011年6月号>世界で活躍する日本の建設企業
 

[世界で活躍する日本の建設企業]

カタール 新ドーハ国際空港旅客ターミナル新築工事

 
 
 
井上善尊 (Yoshitaka Inoue) 大成建設国際支店カタール国新ドーハ国際空港
旅客ターミナルコンプレックス新築工事作業所役員工事長

カタール国の紹介

南側上空から見たメインターミナルビル

  2010年12月2日、2022年のサッカー・ワールドカップの開催地に選ばれた中東・ペルシャ湾岸の国・カタール。今年の1月に同国で開催されたアジアカップで日本が優勝したのも記憶に新しい。埋蔵量世界第三位の天然ガスを利用したLNG事業が生む豊かな収入を、スポーツ・文化・教育・医療に注力しており、大規模な都市開発が目白押しの状態である。2004年に約74万人であった人口も、2010年には倍以上の約170万人(外国人労働者を含む)に達するという急激な増加を遂げている。このような急速な経済成長を見せる同国の中で、中東地区のハブ空港としての地位を確実なものにするという国家目標や、フラッグキャリアであるカタール航空の積極的な路線拡大に対応するために、新空港の建設が現在、急ピッチで進められている。

プロジェクトの紹介

当プロジェクトは既存の空港の東側に約22km2の敷地を確保し、A380機種対応の4、000m超級の滑走路二本を含む、新規の空港として計画された。開港時には年間で旅客2、400万人・貨物75万t対応、現在計画中の拡張部分を含めると、旅客5、000万人・貨物200万トン対応の空港となる。その内、大成建設はトルコの建設会社TAVと共同企業体を組み、旅客ターミナルおよびコンコースビル工事の一期・二期、増床追加工事を受注した。

工事概要

メインターミナルビル南側外観完成予想パース

  工事概要は、一期・二期および増床追加工事を合わせて、建築面積17万m2、延床面積49万m2、地上五階建て、一般設備の他、旅客搭乗橋設備、旅客手荷物処理システム、ドッキングシステム、情報通信システム等の空港特殊設備、また前面高架橋、歩行者用橋・連絡塔なども工事範囲に含まれる。着工は2006年3月で、2012年2月末の竣工を目指している。当プロジェクトでは、2011年4月現在、毎日約1万5、000名の作業員が働いており、その国籍の数は30にもおよぶ。安全管理を何にもまして徹底させるために、各国語での安全教育を行っている。

 また、客先から要求されている高いグレードでのプロジェクト管理に対応するために、強固な管理組織の構築、大成建設およびTAV社がこれまで数多くの国際空港建設で培った経験と世界的なネットワークとサプライチェーンを駆使した調達、さらにサブコンを含めた労務者管理を厳格に行っている。

 品質管理面においても、「品質保証プログラムを施工者みずから確立すること」「ISO9001に適合する品質マネージメントシステムをつくること」という契約上の要求を満たすために、工事部とは独立したQA/QC部門を設置し、品質保証と品質管理を行っており、その品質管理文書・記録(計画書、検査記録)は多岐に亘っている。

終わりに

  このような前例を見ない大規模なプロジェクトを遂行する、社員・スタッフ・作業員の健康面への配慮は重要な課題であり、特に夏場の最高気温が摂氏50度を超えることに起因する熱中症対策など、万全を期している。

 当プロジェクトにおいて、工程・品質・安全管理等為すべきことは多いが、工事完成の暁には中東地区航空路の一大拠点となるであろうこの国家的プロジェクトに参加・貢献できることを誇りに思い、発注者の求める高度な要求に社員はじめサブコン・ワーカー・その他関係者全員が総力を上げて、これに応えていきたい。
 
   
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