ACe建設業界
2011年7月号 【ACe建設業界】
ACe建設業界
特集 人づくり
 第2回 「繋」
最大級の津波を
 想定した減災対策へ
平成23年度
 意見交換会
遠近眼鏡
天地大徳
世界で活躍する
 日本の建設企業
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BCS賞受賞作品探訪記
建設の碑
フォトエッセイ
目次
ACe2011年7月号>世界で活躍する日本の建設企業
 

[世界で活躍する日本の建設企業]

香港 DSD チュンワン排水路トンネル工事

 
 
 
松樹道一 (Doitsu Matsuki) 前田建設工業株式会社 香港支店 DSDチュンワン作業所長

プロジェクトの紹介

トンネル発進基地全景

 本工事は、香港新界チュンワン地区の洪水対策を目的として、香港特別行政区渠務署(DSD)により発注された新設排水路トンネル工事です。

 工事は、トンネル5.1km(内空径6.5m)、既存河川に面した取水口施設三カ所及び海岸に面した排水口施設一カ所からなります。また、トンネルを含む地下構造物が、業者設計となっています。特徴として、トンネルの使用機械が指定されていること(TBMダブルシールドタイプ)とトンネル両端部に維持管理用の車両昇降施設(スパイラルランプ形式)が施されていることです。

 取水口部の掘削深度は30mから40mになるため、取水部は渦巻き状の構造となっており、竪坑と横坑の連結部にはエア抜き用のチャンバーがあります。トンネル掘進は片押しで全長を掘削し、ずり搬出を全線ベルトコンベヤーで行い、最盛期平均日進は20mです。

 香港も日本と同様騒音規制が厳しく、防音建屋でトンネル発進基地を囲い、24時間体制で掘進しています。

工事概要

発注者 :香港特別行政区渠務署(DSD)
設計者 :Mott MacDonald Hong Kong Limited
施工者 :前田・CREC・SELI JV
契約額 :1,123100万香港ドル (約135億円)
工  期 :4年7カ月(2007年12月28日 から 2012年7月27日)
工事場所:香港新界チュンワン地区


トピックス

 技術面に関しては、既存道路下に建設するボックスカルバート、河川切り替え作業を伴う既存河川内での工事、発破禁止箇所での硬岩の機械掘削、地下埋設物の防護、ズリ出しやセグメント搬入などを含む効率的なTBMシステムなど多くの課題があります。例えば、機械による効率的な岩掘削の対策として、日本から輸入した大型割岩機の使用が挙げられます。特に直径4.5m、深さ40mの立坑の岩掘削では、使用機械の制限を受け大型ブレーカーを搬入できないため、この大型割岩機が非常に有用です。

 当工事の背景に関しては、例年発生する台風等による豪雨とそれに伴う洪水被害が挙げられます。香港の地盤は、土砂層の少ない岩盤でできており、一度大雨が降ると、時として山岳地帯から市街地へ滝のような水が流れ込みます。従って、香港市民は洪水対策に対し大きな関心をもっています。この水を制御するためにDSDが現在、香港地区、ライチコック地区、チュンワン地区で洪水対策工事を行なっています。工事完成は、災害防止の観点から大きな期待が掛けられています。

香港の紹介

トンネル内部と運搬用ロコモーティブ

  香港は華南の珠江デルタに位置する香港島、九龍半島、新界及び周辺の南シナ海に浮かぶ島々を含めた中華人民共和国の特別行政区です。面積は約1、100平方km(東京都の約50%)、人口は約700万人で、アジアを代表する世界都市の一つとなっています。

 気候は、温帯夏雨気候に属し、秋・冬は温暖で乾燥しており、春・夏は海からの季節風と熱帯低気圧の影響で高温湿潤です。

 秋はしばしば台風に襲われます。台風の警報が発令されると学校や企業、官公庁も休業となります。

 香港市民の教育水準は高く、国民の30%以上が広東語の他に英語を理解し、また、比較的仕事熱心な人が多く見受けられます。1997年の中国への返還後、中国の標準語である普通語も一般に使われています。
 
   
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