澄んだ冷涼な空気が漲(みなぎ)る清里高原の牧歌的風景。米人牧師ポール・ラッシュが八ヶ岳南麓に昭和13年創設した宿泊施設の清泉寮を範例に別荘や保養施設が建つようになる。
古にも、風光明媚な里に皇族や貴族が別業と呼ぶ別邸を構えた。京の都では嵯峨、白河、鳥羽、宇治等が好まれ、桂や修学院等、天皇や上皇の離宮も各所に造営された。武家が倣った時代もある。明治維新で東京に遷都した後も皇室の避暑や避寒、静養のために離宮や御用邸が設けられた。近辺に政財界の要人や資産家達が別宅を構えたのも道理で、鄙の里は瞬く間に別荘地へと変貌した。