特集 人づくり
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目次
ACe
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2011年8月号
>世界で活躍する日本の建設企業
[世界で活躍する日本の建設企業]
インド ニプロインド新工場建設プロジェクト
関原宏行 (Hiroyuki Sekihara)
清水建設株式会社 国際支店 インド営業所工事長
プロジェクトの紹介
完成パース(正面)
本プロジェクトは、ニプロ(株)(本社 大阪)が人工腎臓、注射器等の医療機器を生産するために建設する新工場です。これまでは、精密な生産技術が必要な医療機器は国内で生産、インドに輸出し販売していました。しかし、為替変動リスクを回避し生産のグローバル化を加速する方針に基づき、経済成長著しいインドで、地産地消を目的とした新工場を建設することになりました。
プロジェクト概要
工場内の施工状況
インド・プネ市郊外の工業団地内、21万m
2
の敷地に、延床面積約5万4千m
2
の大型生産工場を、平成24年3月竣工を目指して現在施工中です。工場は製造エリアのほとんどがクリーンルームで、1日当たり1千m
3
もの水を処理する造排水設備や発電機も備えています。また、生産した医療機器を滅菌するためのガンマ滅菌施設があることも本プロジェクトの特徴であり、清水建設は技術研究所や本社支援部署の協力を得て、全社一体となってこの要求の高い工場の品質管理を行っています。
広大な敷地は高低差が32m程あり、しかも地盤はほとんどが岩盤のため、1日に最大約5千m
3
の発破による掘削を行い、全体で約50万m
3
の造成工事を建屋工事に先がけて実施しました。
工業団地ではあるものの、着工時にインフラが未整備で、電気は発電機、水は近くの井戸から取水、給水車で供給しました。さらに生コン工場が近くにないため、現場内にバッチャープラントを設置し、コンクリートの品質管理を的確に行いながら打設しています。上部構造は鉄骨造で、インドでは一般的なプレエンジニアリング鉄骨(PEB)を採用していますが、パイプラックやぶどう棚とよばれる鉄骨フレームを事前に計画し、設備工事の施工効率を上げる工夫をしています。
インドの協力業者との毎日の打ち合わせ、現場でのコミュニケーションを通じ、品質管理だけでなく安全管理にも徹底して取り組んでいます。
インド・プネ市の紹介
インド プネ市位置図
プネ市は、金融と経済の中心であるムンバイの南170kmに位置し、プネ近郊を含めた人口は約500万人でインド八番目の都市です。海抜600mの高原に位置するため、厳しい気候の地域が多いインドにおいて、比較的過ごしやすい都市と言えます。千年もの歴史を持つプネは「マハラシュトラ州の文化的首都」とも呼ばれており、要塞跡や宮殿、庭園など、多数の名所があります。また、8月末または9月初めに行われるガネーシャ・フェスティバルと呼ばれる祭典が有名で、満月を最終日として10日間にぎわいます。
インドの主要都市と空路・鉄道・陸路で結ばれているプネ市は「東のオックスフォード」として知られる学術都市で、インド国内のみならず世界中から学生が集まっています。IT産業を中心にインドでもっとも目覚ましい発展を遂げている都市です。
プネ市内
終わりに
竣工後、本工場で生産された医療機器がインドの病院で使用され多くの患者の治療に役立つことは、本プロジェクト関係者全員の願いです。皆が同じベクトルを持って、その目標達成に向けて進めるよう、更なる努力をしていきます。